それらしい台詞でも
私は集中モードで残業をしていた。
そんなに年の違わない後輩が私のデスクの脇からモニターを覗いてきた。
集中を切られた私は
「なんだよ。」
と冷たく言う。
彼は気にした様子もなく聞いてきた。
「ちょっと疲れてるの(仕事に)ですが、どうすればよいですかね?」
そんな事を聞かれても、答えなんか用意していない。
私にも経験があるが、実際に答えなんかない。休むしかないのだ。
人間というのは、自分のポジションを落とすことに非常に敏感に作られているらしく、休むことをしない。仕事なんか投げ出してしまえば良いのに、そんなことをしたら人生の終わりのように考えてしまう。
当然、彼にも休めば良いことはわかっている。
それでは私からどんな言葉を引き出したいのだろうか?
私なんかを頼って聞きに来てくれたのだから、真面目に答えを探してみた。
私がどん底にいたとき、這い上がる方法があっただろうか?答えは全くと言ってよいほど無い。
ただ耐えて耐えて耐えて時間が過ぎる事を望んでいただけだった。
「何とかしようとしなくていいんじゃない。時間が経てば良い時もくるよ。」
それらしい台詞を言葉にしてみたが、嘘ではないような気がした。
彼は少し表情を明るくした。