むちうちっていったいなんなんだ

自分で掘った人生の落とし穴に落ちた私は這い上がれるのか

尊敬する人

部長の思い出は多くはないのだが、強く記憶に残っている。

格好良くて、厳しくて、あたたかい。

 

私が新入社員として配属された部署が希望していたものとは違っていたこともあり、私はやる気もなく、やらされている感を態度にまで出していた。

当然、その部署に馴染むことはできず、出社してから帰るまでに、人と会話をした回数を数えられるほどだった。

 

私が入った会社は歴史のあるメーカーで、部の席順は古いタイプだった。部長が前にこちらを向いて座り、課が島になっているあれだ。

 

新入社員のわたしは部長から最も遠い場所に座らされ、与えられた課題をつまらなそうにこなしていた。そんな状態が数ヶ月続くと私はどんどん萎縮していき、会社を辞めることを考え始めた。

 

そんな私を見かねてなのかは分からないが、ある頃から、部長が部長席から私の名前を大きな声で呼ぶようになった。私は慌てて小走りになって部長席に行くのだが、新入社員の私に部長が大した用があるわけもない。

部長は何故私を呼んだのだろうと思うような質問をしてくる。

 

「こんな問題があるんだけどよ~、お前どう思う」

今思えば私にも答えられるような簡単な質問をしてくれていたのだが、馬鹿な私は得意になって回答していた。

 

そんな状態が半年ほど経ったころには、少しずつだが先輩との会話が増え、仕事が楽しいと思えることもあるようになった。

 

その後私は部長のお陰もあり、社内結婚をするのだが、それほど職場に馴染めるようになっていた。勿論、部長には主賓の挨拶をしていただいた。

 

ある日出社すると、月曜なのに朝礼は副部長だった。

 

「昨日部長が倒れました。」

 

 

 

長くなったので、[続く]にします。