むちうちっていったいなんなんだ

自分で掘った人生の落とし穴に落ちた私は這い上がれるのか

あの生徒の気持ち

体がだるく布団に入りながら
考え事をしている

ふと学生の時の出来事を思い出した

私はその頃
住宅を改造した小さな学習塾でアルバイトをしていた

塾長は厳しく怖い感じの人で
生徒からは好かれてはいなかったが
親は安心して子供を通わせることが
出来たのだと思う
小さな塾に沢山の生徒が集まっていた

中学生に数学を教えている時のこと
私はある生徒に他愛もない質問をされた
生徒はあと何分で帰る時間になるのか聞いてきた

私はそんな質問をするなと思いながら
教室の壁の時計を見た
そして少し怒った口調で
「あと45分見ればわかるだろ」
と言った

その生徒は勉強が全く出来なかった
今なら何かしらの病名が付いていたのかもしれない

生徒は凄く悲しそうな表情を浮かべながら言った
「そんな言い方しなくてもいいじゃん」

その時私はしまったと思った
その生徒は時計を見ても残りの時間がわからなかったのだ

生徒はしばらくして塾に来なくなった

あとから聞いた話だが
塾長がその生徒の親にやめて欲しいと言ったようだ

学生の私には
ショッキングな出来事だったが
所詮は他人事だと思っていたと思う

私は今何も出来ない
少なくとも人の役に立つようなことは何も出来ない

悲しい表情を浮かべた時のあの生徒の気持ちと
やめて欲しいと言われた親の気持ちが
今なら少しわかる気がする