薄毛
私はハゲということはないが、薄毛が気になる年頃だ。
四十代も半ばに差しかかると皆、気になっているはず。
ヘアセットのテクニックで何事もないように生活している。
自転車で転ぶ前の私の悩みランキングの上位にはいつも薄毛があった。
実家で療養していたときの地獄の様な毎日のある日、母親に言われたことがある。
「足とか腕が無くなったわけじゃないんだからよかったじゃない」
すぐ様、私は少し強い口調で返した。
「足が無くなってこれが治るならその方がいいよ」
今となっては親の気持ちも考えずに、随分勝手なことを言ったものだと思えるが、その時の私には相手を気遣う余裕なんて一欠片も無かった。
何故だかこんな事も思った。
髪の毛が薄くなる事で悩んでいたなんて、なんて幸せだったのだろうと。
今、鏡の前でテクニックを駆使している私は以前は気付かなかった幸せを感じる事が出来る。
せこい事をしないで、一層の事丸坊主にしても良いかもしれない。