なんとかもう一度起き上がって
うちのやつのお父さん。
三姉妹のおじいちゃんが
倒れてしまった。
なんとかもう一度起き上がって
うちのやつと会話をしてくれないか。
忘れられない思い出がある。
長女が産まれたばかりのゴールデンウィークだったと思う。
孫の顔を見せるため、うちのやつの実家に帰省していた。
私は途中で出張に行くことになっていた。
出張前日の夜、おじいちゃんは一人で買い物に行くと上等なマグロの刺し身を買ってきた。
お酒を飲みながら刺し身を取り出すと、私の為に買ってきたと言って差し出した。
出張の電車で、少し恥ずかしそうに刺し身を出すおじいちゃんの姿を思い出し、感謝の気持ちでいっぱいになった。
おじいちゃんは、大きな病院のベッドで目を開けていた。何か言いたそうにみえたが音には出来なかった。
ただ、その姿は惨めなんかではなく、寧ろ立派な、立派な姿に見えた。
私などに言われたくないかもしれないが本当に立派に見えた。
なんとかもう一度起き上がって
うちのやつと会話をしてくれないか。
そしておばあちゃんと
三姉妹と。
少しだけでよいから私とも会話をしてくれないものか。